首都直下型のM7クラスの大地震が30年以内に70%の確率で起こると言われています。 内閣府防災および東京都によるシミュレーションでは、首都直下型の大震災では約33万戸の戸建住宅の半壊が想定されています。 その時、地域工務店に求められる役割とは一体何でしょうか。実際に被災の経験があるスタッフが当時の状況とあわせてお話いたします。
木造応急仮設住宅☆団地全景
【福島会津若松市扇町】
私は、2004年10月23日(土)17時56分発生の新潟県中越地震に長岡市中心部、当時の工務店事務所1階で遭遇し、私自身が被災者のひとりとなった経験があります。
建築関連業者自身も被災している現状で、木造住宅の応急修理のために即に事業を継続できる建築業者は決して多くはなく、実際に震災翌日に、顔見知りの工務店社長が避難所で市民に紛れている姿も見かけ、肩を落としました。
被災後の様々な厳しい現状の中で、必要な補強、修理などの手を入れることで、在宅避難ができる一部損壊や半壊住宅を見ながら、職人の手配や資材の確保など困難を極める現状がそこには広がっていました。 これが、震災当時から今に至るまであまり語られてこなかった、現実の住宅事情です。
有事にも活躍する薪ストーブ
私はその時の被災経験から、被災した方々から求められる多くの相談依頼や、緊急応急修理工事の要請に応え、ひとりでも多くの方の声を聞くこと。
そして、必要な住まいをスピード感を持って応急修理し、避難所生活期間を短縮し、仮に入居できても不便をきたす応急仮設住宅の必要数を減らすことが、地域工務店に求められる役割であり、重要な責務だと考えています。
あれから13年。 おかにわリフォーム工房の店長となった私は、災害直後からそこに着手できる体制(BCP/事業継続計画)を検討、マニュアル化に着手。
有事にも活躍する薪ストーブ
災害発生時にまず行うことは、自分たちが建てた建物の被害状況、さらにはそのオーナーの状況を確認すること。
そこでは“設計”もできるリフォーム会社の役割は大きく、インスペクション(住宅診断)を実施して正しい住宅の復旧を提案・実施していくことは、在宅避難の可能な住宅をいち早く復旧し、不足する避難所や応急仮設住宅の問題解決の一助を担うことに大きく貢献できると信じています。
また、被災地では自治体自体も被災し、混乱していますから、ライフライン、住宅支援の情報についても当然、錯綜します。
その状況の中で情報を整理し、被災した方々への適切な情報提供と、住宅の修理、補強、再建など様々なご依頼に継続的に対応できるのも地域工務店の足と経験があってこそです。
混乱する被災地において、地域の方に「相談できる相手がいる」安心感を提供したい。 そんな思いで体制づくりに取り組んでいます。
だからこそ、基本性能にこだわります。 そこから元を正せば、震災減災も大切なことだけれど、そもそも論としてデザインを重視して性能が落ちるリフォームにはNO!
まずは、骨格としての地盤、基礎、構造ありきです。
また、通り一辺倒な耐震性だけでなく躯体を“健康な状態”に保ち続けること(持続性・耐久性)も広義の防災・減災対策と言えるでしょう。
さらには、エネルギーにできるだけ頼らない低エネルギー基本的な考え方も大切です。
建築基準法 第1条 国民の生命、健康と財産の保護を図る
の根本的な考えに基づき、表面だけ…デザイン優先…のリフォーム工事は基本的にはお受けしていません。
時には、お客様のご要望と反することもありますが、プロとして伝えなくてはいけないことはキチンとお伝えしています。
これがおかにわリフォーム工房の基本スタンスです。